5.1.2 運航時の点検及び確認事項
(1)安全運航のためのプロセスと点検項目
安全に運航するために点検プロセスを定め、そのプロセスごとに点検項目を設定する。点検プロセスは機体メーカーの指示する内容に従って実施すること。
1)運航当日の準備
運航当日の準備では、必要な装置や設備の設置を行い、飛行に必要な許可・承認や機体登録等の有効期間が切れていないかを確認する。
2)飛行前の点検
飛行前の点検は必ず機体を飛行させる前に都度行うべき最終点検である。ここではバッテリーのチェックや機体の異常チェックなど、無人航空機が正常に飛行できることを最終確認する。
3)飛行中の点検
飛行中の点検は飛行中に行うべき点検である。ここでは、飛行中の機体の状態チェックや、飛行している機体の周囲の状況を確認する。
4)飛行後の点検
飛行後の点検は、無人航空機が飛行を終えて着陸したあとに行うべき点検である。ここでは飛行の結果、無人航空機の各部品の摩耗等の状態を確認する。
5)運航終了後の点検
運航終了後の当日の運航が終了したあとに行うべき点検である。ここでは無人航空機やバッテリーを安全に保管するための点検や、飛行日誌の作成などを確認する。
6)異常事態発生時の点検
飛行中に異常事態発生が発生した際に確認するべき点検である。ここでは危機回避行動を行い、安全に着陸するための確認項目を確認する。
(2)運航者がプロセスごとに行うべき点検
以下にはプロセスごとに行うべき点検項目の例を挙げているが、運航する無人航空機の特性やその運航方法によって、必要な点検などを追加で行う必要がある。
プロセス | 点検項目の例 |
飛行前の準備 | ①無人航空機の確認 ・無人航空機の登録及び有効期間 ・無人航空機の機体認証及び有効期間並びに使用の条件(運用限界) ・整備状況 等 ②操縦者の確認 ・技能証明の等級・限定・条件及び有効期間 ・操縦者の操縦能力、飛行経験、訓練状況 等 ③飛行空域及びその周囲の状況の確認 ・第三者の有無、地上又は水上の状況(住宅、学校、病院、道路、鉄道等) ・航空機や他の無人航空機の飛行状況、空域の状況(空港・ヘリポート、管制区域・航空路等) ・障害物や安全性に影響を及ぼす物件(高圧線、変電所、電波塔、無線施設等)の有無 ・小型無人機等飛行禁止法の飛行禁止空域、緊急用務空域、飛行自粛空域等の該当の有無 等 ④気象の状況の確認 ・最新の気象状況(天気、風向、警報、注意報等) ⑤航空法その他の法令等の必要な手続き ・国の飛行の許可・承認の取得 ・必要な書類の携帯又は携行(技能証明書、飛行日誌、飛行の許可・承認書 等) ・航空法以外の法令等の必要な手続き 等 ⑥立入管理措置・安全確保措置 ・飛行マニュアルの作成 ・第三者の立入りを管理する措置 ・安全管理者や補助者等の配置・役割・訓練状況 ・緊急時の措置(緊急着陸地点や安全にホバリング・旋回ができる場所の設定等) 等 ⑦飛行計画の策定及び通報 ・上記事項を踏まえ飛行計画を策定 ・ドローン情報基盤システム(飛行計画通報機能)に入力し通報 |
飛行前の点検 | ①各機器は安全に取り付けられているか(ネジ等の脱落やゆるみ等) ②発動機やモーターに異音はないか ③機体(プロペラ、フレーム等)に損傷やゆがみはないか ④燃料の搭載量又はバッテリーの充電量は十分か ⑤通信系統、推進系統、電源系統及び自動制御系統は正常に作動するか ⑥登録記号(試験飛行届出番号及び「試験飛行中」)について機体に表示されているか ⑦リモートID機能が正常に作動しているか(リモートID機能を有する機器を装備する場合) (例)リモートID機能が作動していることを示すランプが点灯していることの確認 |
飛行中の監視 | ①無人航空機の飛行状況 ・無人航空機の異常の有無 ・計画通りの経路・高度・速度等の維持状況 ②飛行空域及びその周囲の気象の変化 ③飛行空域及びその周囲の状況 ・航空機及び他の無人航空機の有無 ・第三者の有無 等 |
異常事態発生時の措置 | ①あらかじめ設定した手順等に従った危機回避行動をとる ②事故発生時には、直ちに無人航空機の飛行を中止し、危険を防止するための措置を取る ・負傷者がいる場合はその救護・通報 ・事故等の状況に応じた警察への通報 ・火災が発生している場合の消防への通報 等 ③事故・重大インシデントの国土交通大臣への報告 |
飛行後の点検 | ①機体にゴミ等の付着はないか ②各機器は確実に取り付けられているか(ネジ等の脱落やゆるみ等) ③機体(プロペラ、フレーム等)に損傷がゆがみはないか ④各機器の異常な発熱はないか |
運航終了後の措置 | ①機体やバッテリー等を安全な状態で適切な場所に保管 ②飛行日誌の作成(飛行記録、日常点検記録及び点検整備記録) 等 |
(3)ガソリンエンジンで駆動する機体の注意事項
ガソリンは危険物に該当するため、乗用車等で運搬する場合には、消防法で定められた22リットル以下の専用の容器で運搬することが必要である。エンジン駆動の場合には機体の振動が大きいため、ネジ類の緩みなどを特に注意して点検する必要がある 。
(4)ペイロードを搭載あるいは物件投下時における注意事項
投下場所に補助者を配置しない場合、物件投下を行う際の高度は1m以内である必要がある。