4.無人航空機のシステム4.5.1

4.無人航空機のシステム4.5.1 ドローン一等国家資格【学科対策】

4.5 機体以外の要素技術

4.5.1 電波

(1)電波の特性

1) 直進、反射、屈折、回折、干渉、減衰

電波の性質の種類と特徴は以下のとおりである。
電波には障害物等の後ろに回り込む回折(かいせつ)という性質、異なる媒質(ばいしつ)にぶつかると透過、反射あるいは屈折する性質周波数の近い電波が重なると電波干渉が発生しお互いを減衰(げんすい)させる性質などがある。2.4GHzの電波は回折しにくく直進性が高いため障害物の影響を受けやすくなる

性質の種類性質の特徴
直進電波は、進行方向に障害物が無い場合は直進する。
反射、屈折電波は、2つの異なる媒質間を進行するとき、反射や屈折が起こる。
常に反射の法則(入射角と反射角の大きさは等しい)が成り立つ。
回折電波は、周波数が低い(波長が長い)ほど、より障害物を回り込むことができるようになる。
干渉電波は、2つ以上の波が重なると、強め合ったり、弱め合ったりする。
減衰電波は、進行距離の2乗に反比例する形で電力密度が減少する(進行距離が2倍になると電波の電力密度は1/4になる)。
周波数により特性は異なるものの、電波は水中では吸収されて大きく減衰される。

2) マルチパス

送信アンテナから放射された電波が山や建物などによる反射、屈折等により複数の経路を通って伝搬される現象マルチパスという。反射屈折した電波は、到達するまでにわずかな遅れを生じ、一時的に操縦不能になる要因の一つとなっている。マルチパスによって電波が弱くなり一時的に操縦不能になった場合送信機をできるだけ高い位置に持ちアンテナの向きを変えて操縦の復帰を試みる

3) フレネルゾーン

フレネルゾーンとは無線通信などで、電力損失をすることなく電波が到達するために必要とする領域のことをいう。無線通信での「見通しが良い」という表現は、フレネルゾーンがしっかり確保されている状態であることを意味する。
フレネルゾーンは、送信と受信のアンテナ間の最短距離を中心とした楕円体の空間で、この空間は無限に広がるが、電波伝搬で重要なのは第1フレネルゾーンと呼ばれる部分である。このフレネルゾーン内に壁や建物などの障害物があると、受信電界強度が確保されず通信エラーが起こり、障害物がない状態に比べて通信距離が短くなる
このフレネルゾーンの半径は周波数が高く(波長が短く)又はお互いの距離が短くなればなるほど小さくなる
( 2.4GHz帯、5.7GHz帯の場合、2地点が100m離れたケースでは2m以下)。地面も障害物となるため、フレネルゾーンの半径を考慮してアンテナの高さを十分に確保する必要がある。

(2)無⼈航空機の運航において使⽤されている電波の周波数帯・用途

無人航空機の運航において使用されている主な電波の周波数帯は、
2.4GHz帯、5.7GHz帯、920MHz帯、73MHz帯、169MHz帯である。
169MHz帯は主に2.4GHz帯及び5.7GHz帯無人移動体画像伝送システムの無線局のバックアップ回線として使用される。電波の周波数帯や出力、使用するアンテナの特性、変調方式、伝送速度などによって通信可能な距離は変動する。

(3)無⼈航空機以外も含めた⽇本の電波の利⽤状況〔一等〕

電波の特性として、波長が長いほど直進性が弱く情報伝達容量が小さくなる減衰はしにくい。逆に波長が短いほど直進性が強く情報伝達容量が大きくなる減衰はしやすい
無人航空機の制御用通信に多く使用される
極超短波は10cm~1mの波長(周波数300MHz~3GHz)で、
超短波 (波長1~10m、周波数30~300MHz)に比べて直進性が更に強くなるが、多少の山や建物の陰には回り込んで伝わることができる。伝送できる情報量が大きく、小型のアンテナと送受信設備で通信できることから、携帯電話や業務用無線、アマチュア無線、無人航空機など多種多様な移動通信システムを中心に、地上デジタルTV、空港監視レーダー、電子タグ、電子レンジ等幅広く利用される。
マイクロ波は1~10cmの波長(周波数3~30GHz)で、直進性が強い性質を持つため特定の方向に向けて発射するのに適している。伝送できる情報量が非常に大きいことから、衛星通信、衛星放送や無人航空機の画像伝送、無線LANに利用される。レーダーもマイクロ波の直進性を活用したシステムで、気象レーダーや船舶用レーダー等に利用される。

(4)電波の送信、受信に関わる基本的な技術

送信機のアンテナから発射される電波の強さは、方向により異なる(無指向性のアンテナの場合は、アンテナの周囲に対して同様に発射される)。アンテナの角度は調整できるので、操縦時の送信機の持ち方や無人航空機の位置を考慮して最適なアンテナ角度を設定する必要がある

(5)電波の特性に伴って発⽣する運航上のトラブルの調査・分析〔一等〕

外来電波や他の設備・機器からのノイズにより無線設備の通信環境が不安定になることがある。電波環境の調査として、スペクトラムアナライザを用いて使用している周波数と同じ電波が現地エリアで使用されている状況や、他の設備・機器からノイズが発生していないかを確認する方法がある。様々な無線局が散在する市街地での飛行のためには、電波環境の調査は非常に重要である。

(6)電波と通信に関わる基本的な計算 〔一等〕

カテゴリーⅢ飛行を行うにあたっては、電波と通信に関わる基本的な計算(周波数帯や送受信間距離を踏まえ必要となるアンテナの高さ等)について理解しておく必要がある。

1)フレネルゾーン半径と必要なアンテナの高さ

フレネルゾーンの半径:R(m)、送受信アンテナ間距離:D(m)、使用周波数f(Hz)、波長:λ(m)とすると、これらの間には以下の関係がある。
フレネルゾーン半径 と必要なアンテナの高さ

上記式を用いた、送受信アンテナ間距離:100m、使用周波数:2.4GHzのときのフレネルゾーンの半径の具体的な導出方法を以下に示す。
上記の前提条件より、

と求めることができる。
以上より、フレネルゾーンの半径Rは、

よって理想的なアンテナの高さは1.77m以上となる。
なお、実際にはフレネルゾーン半径の60%以上のアンテナ高さが確保できていれば、フレネルゾーンに障害物がない場合と同等の通信品質を確保できるといわれている。この条件にて必要なアンテナの高さを計算すると、 1.77×0.6≒1.1m以上となる。

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