5.操縦者に求められる操縦知識5.2.1

5.操縦者に求められる操縦知識5.2.1 ドローン一等国家資格【学科対策】

5.2 操縦者に求められる操縦知識

5.2.1 離着陸時の操作

(1)離着陸時に特に注意すべき事項 (回転翼航空機(マルチローター))

1)離陸

回転翼航空機(マルチローター)はコントローラー等によるスロットル操作によって高速に回転する翼から発せられる揚力が重力を上回ることにより離陸する。

機体重量1.5kgほどの回転翼航空機(マルチローター)を例にすると、離陸直後から対地高度1m程度までの間は、回転翼から発せられる吹きおろしの気流が地面付近で滞留し、揚力が増す現象地面効果」が起こりやすくなる。

2)ホバリング

離陸後、任意の対地高度で一定の高度と位置を継続的に維持することをホバリングという。
ホバリング状態の機体は回転翼から発せられる揚力と、重力のバランスが保たれている状態を維持している。
回転翼航空機(マルチローター)が飛行時に高い安定性を確保するために方位センサ、地磁気センサやGNSS受信機、気圧センサが用いられている。
緊急時にはセンサ類に頼らない手動操作によるホバリングも要求される。

3)降下

機体を降下させるには、スロットル操作を徐々に弱め揚力を減少させる。
機体を垂直降下させる時に、吹きおろした空気が再び吸い込まれ、回転翼の上下で空気の再循環が発生し急激に揚力を失う現象ボルテックス・リング・ステート」が発生する。降下の際は水平方向の移動を合わせて操作することで墜落防止対策となる。

4)着陸

降下を継続し着陸を行う際には、対地高度に応じて降下速度を減少させる。着地後にコントローラーでローターの回転を停止させる。

5)GNSS を使用しない操作

緊急時にはGNSS受信装置による機体位置推定機能を使用しない機体操作が求められる。

6)GNSSを使用しないホバリング

ホバリング中GNSS受信機能を無効にすると、機体周辺の気流の影響で水平位置が不安定となるためエレベーター操作及びエルロン操作により水平位置を安定させホバリング飛行を維持させる。

7)GNSSを使用しない着陸

上述の操作によりホバリングを安定させながら、スロットル操作により機体を降下させ着陸させる。
機体を垂直降下させる時に発生する「ボルテックス・リング・ステート」や「地面効果」を抑制するために、細かくエレベーター又はエルロン操作などを行いながら、機体を着地させ着陸を完了させる。

(2)離着陸時に特に注意すべき事項 (回転翼航空機(ヘリコプター))

1)離着陸地点の選定

  • 水平な場所を選定すること。離着陸直前は、機体が水平となるため、傾斜地ではテール部などが地面に接触する恐れがある。
  • 滑りやすい場所を避けること。離陸前は、ヨー軸まわりの制御が不十分な場合があり、ヨー軸を中心に回転する恐れがある。
  • 砂又は乾燥した土の上は避けること。ローターのダウンウォッシュによる砂埃等が飛散し、視界を遮るおそれがある。

2)離陸方法

  • 十分にローター回転が上昇してから、離陸すること。ローター回転が低い状態で無理に離陸させると、機体の反応が遅れることがあり、危険である。
  • テールローターの作用で、離陸時に機体が左右いずれかに傾く場合がある。傾く方向はローターの回転方向により異なる。予め傾く方向を確認した上で、離陸させること。
  • ローター半径以下の高度では、地面効果の影響が顕著となり、機体が不安定になる。離陸後は速やかに地面効果外まで機体を上昇させること。
  • やむを得ない場合を除き、垂直方向の急上昇は避けること。ローター回転が低下し、機体が不安定になるおそれがある。

3)着陸方法

  • 地面に近づくにつれ、降下速度を遅くし、着陸による衝撃を抑えること。衝撃が大きい場合、脚部が変形又は破損するおそれがある。
  • 地面効果範囲内のホバリングは避け、速やかに着陸させること。
  • 接地後、ローターが停止するまで、機体に近づかないこと。

(3)離着陸時に特に注意すべき事項 (飛行機)

1)離着陸地点の選定

  • 滑走路は水平で草などが伸びていない場所を選定すること。傾斜地では滑走中に不安定になり、また草などが伸びているとプロペラに接触し飛行ができないおそれがある。
  • 飛行機の離着陸は風向が重要である。離着陸の方向は向かい風を選ぶのが原則である。横風であってもできる限り向かい風方向を選択する。追い風で行うと失速の危険性が生じ、失速しない速度にすると滑走路を逸脱する危険が生じる。

2)離陸方法

  • 向かい風方向に滑走できるエリアを確保できたら離陸操縦に入る。
  • 風速を考慮し適切なパワーをかけてエレベーターによる上昇角度をとり離陸する。
  • 上昇角度は失速しないように設定する。安全な高度まで機体を上昇させる。

3)着陸方法

  • 向かい風方向に滑走できるエリアを確保できたら着陸操縦に入る。
  • 地面に近づくにつれ、降下速度を遅くし、滑空着陸による衝撃を抑えること。衝撃が大きい場合、脚部が変形又 は破損するおそれがある。
  • 目測の誤りにより滑走路を逸脱することがあるので、厳重に注意が必要である。

(4)カテゴリー飛行において追加で必要となる離着陸の注意点〔一等〕

カテゴリー飛行において、離着陸時では以下に注意して行わなければならない。

  • 離着陸に際しては、機体と人が接触するなど第三者の安全が損なわれるおそれがないようにする。
  • 離着陸時ローターから発せられる風の影響を受け、物などが飛ばされないようにする。
  • 近接する壁面や構造物により、離着陸時に機体が不安定になるような環境は離着陸エリアから除外する。
  • 離着陸エリア上空周辺に電線などの障害物がない、又は回避できる空域を選ぶ。

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