6.1 運航リスクの評価及び最適な運航の計画の立案の基礎
6.1.1 安全に配慮した飛行
無人航空機の飛行にあたっては、法令等に基づく基準や要件に適合させるのは当然だが、様々な要素により、飛行中、操縦が困難になること、又は予期せぬ機体故障等が発生する場合があることから、運航者は運航上の「リスク」を管理することが安全確保上非常に重要である。
すなわち、運航者は行おうとする運航の形態に応じ、事故等につながりかねない危険性のある要素(ハザードを具体的に可能な限り多く特定し、それによって生じる「リスク」を評価したうえで、「リスク」の発生確率を低減させたり、「リスク」の結果となる被害を軽減したりする措置を講じることで、「 リスク 」を許容可能な程度まで低減する必要がある 。
このようなリスク管理の考え方は、特にカテゴリーⅢ飛行において重要となるが、その他の飛行においても十分に理解したうえで、安全に配慮した計画や飛行を行うことが求められる。
(1)安全確保のための基礎
1)安全マージン
飛行を行う際は、原則として飛行空域に安全マージンを加えた範囲で実施する。
- 飛行経路を考慮し、周辺及び上方に障害物がない水平な場所を離着陸場所と設定する。
- 緊急時などに一時的な着陸が可能なスペースを、前もって確認・確保しておく。
- 飛行領域に危険半径(高度と同じ数値又は30mのいずれか長い方)を加えた範囲を、立入管理措置を講じて無人地帯とした後、飛行する。
2)飛行の逸脱防止
飛行の逸脱を防止するためには、以下の事項を行うことが有効である。
- ジオフェンス機能を使用することにより、飛行禁止空域を設定する。
- 衝突防止機能として無人航空機に取り付けたセンサを用いて、周囲の障害物を認識・回避する。
3)安全を確保するための運航体制
安全を確保するための運航体制として、操縦と安全管理の役割を分割させる目的で操縦者に加えて、安全管理者(運航管理者)を配置することが望ましい。
(2)カテゴリー飛行において追加となる重要事項について〔一等〕
1)想定飛行空間と想定外飛行空間
想定飛行空間は、無人航空機の飛行の目的や、機体やシステムの性能、環境に応じて設定される飛行範囲である。機体や外部システムの異常・外乱の影響で想定飛行空間を外れて飛行してしまうことに備える空間として想定外飛行空間を設定する。
飛行の地上リスクを検討する際には、想定飛行空間だけでなく、想定外飛行空間さらに安全マージンとしての地上リスク緩衝地域を合わせた範囲を検討し、そのリスクを一定の範囲まで低減するように計画する。飛行の空中リスクを検討する際には、想定飛行空間だけでなく、想定外飛行空間さらに任意で空中リスク緩衝地域を合わせた範囲を検討し、そのリスクを一定の範囲まで低減するように計画する。
隣接領域について、無人航空機が制御不能な形で侵入してしまった場合に高いリスクが想定される場合には、隣接領域に侵入しないための対策を検討する必要がある。
2)安全確保措置に必要とされる安全性の水準、保証の水準
カテゴリーⅢ飛行は地上リスク、空中リスク共に高いことが想定されるため、飛行可否判断は安全確保措置により得られる安全性の水準(安全の増加)と、 計画されている安全性の確保が確実に実施されることを示す保証の水準(証明の方法)の双方により評価されるべきである。
例えば、第三者への衝突の衝撃を抑える措置を計画する際、その措置の有効性は、衝突軽減の効果について安全性の水準と、その措置が必要な際に機能するかについて保証の水準の双方で、評価又は計画されるべきである。
安全確保措置に必要とされる安全性の水準、保証の水準は、いずれもその運航形態の持つリスクに応じて検討される。